プログラム

「マブイ特別賞」上映


『サシングヮー』
監督:髙嶺剛
1973/15分/日本/FHD
着色を施された古い家族の写真がゆるやかな三線の調べに乗って浮かんでは消えていく。故郷を離れた髙嶺がみずからの家族写真に投げかけるまなざしは強い喪失感に特徴づけられる。本作を1972年の日本復帰という歴史の転換点を境に失われた時間に捧げられたささやかな哀歌として見ることもできるだろう。

<監督プロフィール>
髙嶺剛
1948年沖縄の石垣島川平生まれ。高校卒業まで那覇で過ごしたあと、国費留学生として京都教育大学特修美術科に入学。その頃から8ミリ映画を撮り始める。ジョナス・メカスに私淑し、日本復帰前後の沖縄の風景を凝視した初長編監督作品『オキナワン・ドリーム・ショー』(1974)を制作する。1985年初の長編劇映画『パラダイスビュー』完成。ベルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門をはじめ、10数ヵ国の映画祭に出品。『ウンタマギルー』(1989)でベルリン国際映画祭カリガリ賞、ナント三大陸映画祭グランプリ、ハワイ国際映画祭グランプリ、日本映画監督新人賞など国内外の映画祭で多数上映、受賞し、全編沖縄語で展開される新しい表現を生みだした作家として世界的に注目される。1998年には沖縄を代表する民謡歌手の大城美佐子を主演に迎え、『夢幻琉球・つるヘンリー』を市民プロデューサーシステムでデジタル撮影をいち早く取り入れて製作。2016年の『変魚路』は、18年振りの劇映画作品となる。